2025/09/21
COLT RAIL GUN

Gun Professionals 2019年3月号に掲載
コルトの1911
久しぶりに純正コルト、それも珍しく新品を買った。
機種はと言えば超ベタな今時の1911、ピカティニーレイルが付いたレイルガンである。行きつけのガンショップで大特価セールをやっており、買うなら今と、ほとんど衝動買いした。
価格は840ドル(税別)。新品でこのお値段は超破格だ。何しろ定価が1,199ドルだから、踏ん張ってもなかなか1,000ドルは切れない。聞けば在庫の入れ替えによる処分価格らしい。対応の店員が、「コレ、ほぼ原価割れなんだぜ」と小声で教えてくれるのを、隣りの店員が諌めるくらいのもんだった。
店頭には黒モデルも大特価で出ており、どっちにするか大いに迷った。レイルガンの場合、黒モデルも材質はステンレスで、セラコート仕上げ(マットブラック)なのだそうだ。一般的な価値は黒モデルのほうが高く、実際、正札には100ドル近い差があった。が、使用時の傷が気になる自分はどうしてもステンレス肌に傾く。
しかし考えてみると、現在自分は、まともなコルト製1911を殆ど所持していない。
シリーズ’ 70とコマンダー、そして22コンバージョン版に、あとはリブサイトを付けたプレ70のカスタム品が一挺。それだけだ。過去にリポートで紹介したコルトの1911系は、どれも預かり物で今は手元にない。出来る事なら歴代モデルは一通りは持っていたいところだが、コルトはすこぶる高価。80年代物ならともかく、それ以上古い個体は、程度が良ければ絶対に1,000ドル以下では無理なご時世。
そんなワケで、ちょいと寂しい1911ロスの心境だったから、一挺追加は嬉しい。たまにはこういった新し目のコルトも触って、気持ちをリフレッシュしないとね。
XSE
さて、レイルガンの話をするなら、先ずはベースとなったXSEガバメントに触れなければならないだろう。
1999年以来、軍需に集中して民間市場をだいぶ疎かにしていたコルトは、2002年、LE関係を統括していたコルトディフェンスを分離、再び一般市場に目を向け始めた。新生コルトでは、以前のように記念モデルに終始するのは止め、特にガバ系は市場のニーズに合わせてタクティカル方面なども強く意識。オリジナルメーカーとしての自負をいったん捨てて、遅まきながらもキンバーやらSIG、そしてスプリングフィールドアーモリー等に奪われていたシェアを奪還すべくカスタム仕様に踏み込んだ新型1911を同年に製品化した。それがXSEだった。
XSEは、実戦1911に必要な定番パーツをフル装備で臨んだ。即ち、
- フルレングスのリコイルスプリングガイドロッド
- ノバックの3点白ダット サイトシステム
- アジャストネジ付きのアルミ製3ホール スケルトナイズド トリガー
- エンハンスド コンバットリングハンマー
- アップスイフトビーバーテイル グリップセイフティ
- ナショナルマッチバレル
- アンビのエクステンデッド サムセイフティ
- スライド前方にフォワードコッキングセレーションの追加
- エジェクションポートはフレアカット付きのワイド&ローアー加工
等々である。これらのカスタム仕様は、既に目新しい物は特に無く、当たり前に既存パーツを載っけただけのファクトリー製お座敷カスタムっぽいノリは色濃かった。が、それでも、何より家元コルトから遂に出てきた現代風1911って部分がやはりミソ。加えて、グリップは綺麗な木目とダブルダイヤモンドのチェッカーがファンシーなローズウッドとし、スライドの刻印も品良くまとめ、特にステンレス・モデルは全体にブラッシュ仕上げでスライド側面のみポリッシュしたクールな姿が魅力的。シックでハンサムでしかも適度な華やかさを持った上質なカスタムに仕上がっており、すぐに人気が出た。大げさに言えば、コルト1911の歴史を未来へ繋ぐクリーンヒットの一挺になった。
このやる気満々のXSEの仕様をそのままに、ダストカバーへピカティニーレイルを追加して2009年に登場したのが、レイルガンなのだ。
RAIL GUN
やる気満々のハンサムXSEにレイルが載ったのだから、悪いワケがない。そのものズバリの粋なネーミングも極めてキャッチー。もう、カッコイイの一言。
しかし、ちょっと登場の時期が、待たせ過ぎの感があった。
さすがにXSE誕生の2002年の時点では、タクティカル思想の熟成という点で無理だったかもしれない。けれど、2000年代初期には既にキンバーをはじめとする他の多くのメーカーはレイルを導入していた。出揃っていたと言っても過言ではない。
多分、腰の重いコルトの重役陣が、
「流行に飛び付いたりはせず、伝統を守る事こそ肝要と存じます」とか何とか言って延び延びになったか。かつては業界をリードしていたコルトが、業界の動向を窺う側に堕ちたのは本当に情けない。名前で売れてしまうことの悲劇、宿命を負っている分、どうしても努力の度合いが低くなる。タクティカル思想が熟し切るのを待っていた、という見方も出来ないではないが…。
XSEのヒットに乗じて、せめて2000年代半ばにレイルまで進んでいれば、或いは勢いを持続できたはず。ダラダラやってるから2015年の経営破綻を迎えたりするんだ…と、愚痴はこのくらいにして、レイルガンは、レイル以外の基本的な仕様はXSEをほぼ受け継いだが、一点、リコイルスプリング関係はクラシックなショートプラグ方式に戻した。恐らく、レイル設置の重量増加を懸念し、少しでも軽量化を図ったものと思われる。登場時点でのベース価格は1,087ドルで、XSEより100ドル近く高かった。
さてと、その肝心なレイルである。M1913ピカティニーレイルである。今時、LE用を考えるなら絶対に外せない装備。フラッシュライト等がコレでやっと付くようになった。
筆者が、銃とフラッシュライトとの組み合わせを最初に見たのは、映画『オメガマン』だ。主人公のチャールトン・ヘストンが、S&Wのモデル76サブマシンガンのバレル下部に、クランプのような金具を使って懐中電灯を取り付けていた。アレは今見ると、結構衝撃的だ。何しろ1971年の作品。妙なところで先進性を見せていた。
話を戻して、このレイル、初期はもう少し薄かった。それが現行の製品では分厚くごっつくなった。初期のスッキリ風も捨てがたいが、存在感ではこっちが断然上。
初期型と違う点は他にもあり、
- スライドのセレーションの数が減り、一本当たりの幅が広がった。初期は前が10本で後ろが12本だったのが、前6本、後ろが7本となった。
- トリガーの色が白から黒に変わり、アジャスト用のネジも消え、スケルトナイズドではなくなった。
以上の二点ともう一つ、リコイルスプリングがまさかのデュアルに変わったのだ。初期の段階では確かに定番の16パウンド1本だったはず。デュアル仕様は、10mmのDelta Eliteやら小型のディフェンダーには昔から使われていた形式だが、フルサイズの45用となると、14年3月号でAkitaリポーターが紹介したM45A1で見たのが最初だ。2012年にUSMCのサイドアームに採用されたレイル付きガバだ。調べてみると、このデュアルスプリングは、そのM45A1に使用すべく海兵隊の要請で開発されたものなのだそうだ。従来の一本バネは5,000発程度で交換が必要だったが、このシステムだと15,000発まで使用OKとのこと。Colt Dual Spring Recoil Systemというコルトの登録商標品であり、2015年から一般モデルへも搭載も始まったらしい。自分はてっきり一本バネだと思っていたので、コレは嬉しい誤算。


