2025/10/07
【NEW】95B式自動歩槍 & QBZ97B その開発経緯と細部仕様


2019年に中国人民解放軍が採用した新型アサルトライフルQBZ191、およびQBZ192自動歩槍は、現在欧米諸国に公式には存在せず、取材することができない。その代わりとして、旧型95式自動歩槍のショートモデルをベースにした民間仕様97式Bを取材した。遠からずQBZ191と192に完全に置き換えられ、95式は過去のものとなるだろう。その前に、95式自動歩槍の開発経緯や97式Bの詳細仕様をまとめておくことは、銃器の歴史を研究する上で、価値があることだと考えたのだ。
*それぞれの画像をクリックするとその画像だけを全画面表示に切り替えることができます。画面からはみ出して全体を見ることができない場合に、この機能をご利用ください。
中国は国軍である中国人民解放軍と中国人民武装警察部隊の制式小銃として、5.8mm×42弾を使用するQBZ191自动步枪(以降、日本語常用漢字を用いて自動歩槍と表記するが中国語では自动步枪だ)を採用、2019年10月1日におこなわれた建国70周年記念軍事パレードで公開した。これは1995年に開発を完了し、1997年に制式採用した95式自動歩槍の後継モデルと位置づけられている。
ブルパップデザインであった95式自動歩槍に対し、新しいQBZ191自動歩槍とその短縮版QBZ192自動歩槍は、エルゴノミクスを重視したコンベンショナルデザインのライフルだ。ショートストロークガスピストンで作動し、伝えられている限られた情報から判断する限り、世界各国で採用されている現代アサルトライフルに極めて近いものだと思われる。
しかし、現時点でこのQBZ191自動歩槍は、そのセミオート版も含めて、欧米諸国には輸出されておらず、取材可能なサンプルも見当たらない。今現在の国際情勢から判断すると、この状態は当面続くだろう。
そのため今回はQBZ191自動歩槍が採用されるまで中国人民解放軍で制式採用されていた95式自動歩槍とそのカービン仕様である95式B 5.8mm 自動歩槍の詳細レポートをお届けしたい。
QBZ191自動歩槍の採用から既に6年が経過し、途中コロナ禍があったものの、中国人民解放軍の主力装備は新しいQBZ191に置き換えられていると思われるが、95式自動歩槍も辛うじて一部で併用されているはずだ。
とはいえ、旧型となっていても軍用の95式自動歩槍にアクセス、取材することは、ほとんど不可能と言わざるを得ない。特に2010年以降の改良型95-1式自動歩槍についてはなおさらだ。
しかし幸いなことに、中国は制式ライフルとほぼ同型のセミオートマチックライフルをQBZ97の製品名で製造し、いくつかの国に輸出している(改良型である95-1式ベースのものではない)。
リポーターは本誌2012年8月号で、95式の輸出バージョンである97式 SDM AR-97にアクセスしてリポートをお届けした。中国人民解放軍の制式ライフルは中国独自の5.8mm×42弾を使用するのに対し、輸出バージョンは、QBZ97(97式)と名付けられ、西側各国で入手の容易な5.56mm×45(.223レミントン)弾薬を使用するように改造されている。また民間に対するスポーツ銃として輸出されているため、セミオートマチックオンリーだが、これを用いれば、不完全ながらも中国軍用ライフルの一端を知ることができると思い、あのリポートを作成した。
あれから約12年が経過した2024年、カービン仕様の95B式自動歩槍(中国語表記は95B式自动步枪)の輸出バージョンであるQBZ97Bにアクセスすることができた。これは、中国軍が使用していた95B式自動歩槍とほぼ同型として製作されている。
加えて前回のリポート以降に入手できた資料もあり、当時は記述できなかった開発の経緯に関して、より正確にお伝えできるようになっている。また、新たな資料を精査していく中で、リポーター自身が誤解していたことがいくつも明らかになった。そこで今回の95B式自動歩槍のリポートに併せて、原型となった95式自動歩槍の開発の経緯についても再度記述することにした。さらに95-1式の改良箇所にも言及する。
小口径高速弾の開発
中国での95式自動歩槍の開発は、リポーターの考えていた時期よりずっと前から始められていた。中国の資料によれば、開発はまず小口径高速弾の開発からスタートしたという。
この小口径高速弾の開発は、ベトナム戦争にアメリカ軍が小口径高速弾を使用するM16(AR-15)を投入したことがきっかけだった。当初アメリカは、小柄な南ベトナム軍兵士に使用させるために軽量で射撃時のリコイルが少ないAR-15を導入した。しかし、アメリカ軍が制式ライフルにしていた7.62mm×51弾を使用するM14より、AR-15がベトナムのジャングル戦でより有効なことが判明する。その結果、まずアメリカ空軍がM16として採用し、次いでアメリカ陸軍がこれに改良を加え、さらにボルトフォワードアシストを追加したM16A1ライフルを採用した。
北ベトナムを支援していた中国は、早い時期にベトナムで鹵獲されたM16を入手してこれを調査したはずだ。そしてこれに対抗する形で、中国における小口径高速弾とそれを使用するライフルの開発が始まっている。
それは、1971年3月に中国・北京の人民解放軍総兵站部装備部が開催した小型武器科学研究作業部会においてのことだ。会議の開催日の下3桁をとって713会議の秘匿名がつけられたこの会合で、中国独自の小口径高速弾とそれを使用するライフルの自国開発を決定した。
そしてまず、小口径高速弾の実証トライアルから研究がスタートする。
しかし、当時中国は国際的に孤立し、同じ社会主義国であるソビエトや東ヨーロッパ諸国との関係も決して良好とはいえなかった。このような状況下、研究・開発は当初手探り状態だった。
713会議で決定された新弾薬の性能目標は、口径 約6mm、初速 約1,000m/秒(3,280fps)、腔圧45,514psi以下、有効射程400mでその地点における銃弾の落差40cm以下、最大射程600m、弾薬は徹甲曳光弾や焼夷弾などの特殊弾の製造も顧慮するなどの条件が提示され、また、この弾薬を使用するライフルの重量は3.2kg以内に収めることが定められたという。
当時の中国は国を挙げての政治抗争である“文化大革命”の時期に重なり、初期の実証試験や開発、設計は単に技術面だけでなく、多くの困難にも見舞われた。
いわゆる文化大革命の影響だ。そのスローガンである“農民、労働者、兵士に学べ”に基づき、開発チームには研究機関の技術者だけでなく、製造工廠や多くの軍区の軍人が参加した。中国の資料によると、製造機関としては第973工廠、第942工廠をはじめとする27の工廠が参加し、軍からは浙江戦闘群、安徽戦闘群、江蘇戦闘群、広州蘭州軍区戦闘群、北京軍区戦闘群、瀋陽軍区戦闘群、重慶軍区戦闘群が参加した。これに2つの大学と1つの訓練基地が加わっている。関係者があまりにも多過ぎるだろう。
初期の開発段階では、5.6mm、5,8mm、5,81mm、5.98mm、6mmの各口径の弾薬とこれを射撃するライフルが設計され、実証試験がおこなわれた。
713会議から1年半後の1972年10月、のちに7210会議と呼ばれるようになる自動小銃科学研究会が北京で開催される。この会議では、実証試験で使用された多くの口径の中から継続試験の弾薬が、5.8mmと6mmの二つに絞られた。継続試験で2つの弾薬から最良なものの選択は、四川グループの担当に決まる。
またこの会議では銃弾の流体外形の研究を第940工廠と華東工程大学(現南京科学技術大学)が担当することになり、新しい弾薬に適合するライフリングの研究は第930工廠、第376工廠、第936工廠と華東工程研究所が担当、弾薬の初速と全体の形状の研究は第972工廠がおこなうことも決められた。
5.8mmと6mmの2種類の口径をテストしていた四川グループからの報告書が提出され、1974年4月に北京で科学研究作業会議が開催された。ここで最終的に中国軍の新弾薬の口径が5.8mmに決定し、人民解放軍一般兵器部と第5機械部はこの口径を承認した。
続いて弾薬全体の全長や、薬莢の長さやテーパー、ネック部の形状などの試作とテストがおこなわれ、スタートから7年後の1978年に中国軍の小口径弾が制定された。
全長:58mm
薬莢長:42.2mm
リム径:10.42mm
弾頭径:6mm(.236”)
弾頭重量:64gr(各種弾頭あり)
銃弾仕様:FMJスチールコア(各種あり)
Maxプレッシャー:41,500psi
初速:3,051fps(930 m/s) 95式自動歩槍の場合
2,592fps(790m/s)95式B自動歩槍の場合
2010年に改良を加えた新型DBP-10は弾頭重量77grとなっている。


