くたびれた編集部備品のM92Fミリタリーを再生させるべく、前回は分解とパーティングラインの処理を行なった。今回はいよいよ塗装に突入していく。
前編はこちら
塗料を用意する
塗装はエアブラシを使うのが理想だが、今回は手軽にできる缶スプレー塗料を用意した。
染めQ「ミッチャクロンマルチ」は塗料の食いつきをよくするプライマー
ガンショップ・インディ「ブライトステンレス」は金属感を出すための下地に
ガンショップ・インディ「クリアパーカー」はツヤ調整と塗膜保護に
GSIクレオス「Mr.カラースプレー 黒鉄色」はフレームとバレルに
GSIクレオス「Mr.カラースプレー メタルブラック」はスライドに塗装
GSIクレオス「Mr.リトルアーモリーカラー アルマイトブラック」はレバー類などに筆塗りし、黒の微妙な色の差を出すことにした
塗装の準備
塗装前に、塗料が後で剥がれないようにパーツ表面を脱脂する。そして塗料をかけたくない内部や接触部をマスキングで保護し、塗装しやすいように持ち手を付けるなど準備しよう。
フレームやスライドは内部に水を入れたくないためアルコールで全体表面を拭いて脱脂した。その他のパーツは、できるだけ洗剤で水洗いした方がいいだろう
持ち手を付ける。今回フレーム用には壊れたマガジンを利用した。スライドの固定にテーパー形状の油性ペンは最高…
トリガー周りの内部メカやスライドとフレームの接触部に、塗料のミストが回らないようマスキングテープでマスキングした
塗装前に缶スプレー塗料をよく撹拌しないと、うまく塗装できない。上下に振るよりも回転させるほうが効果的に混ざるのでオススメ
下地を塗装する
塗装の前段階として塗料の食いつきをよくするプライマーと、下地塗料を塗装していく。
フレームやスライド、アウターバレルなどABSパーツに、プライマーのミッチャクロンマルチを吹く
一度に厚塗りしないように、最初はやや遠くから吹くとよい
各種レバーなど亜鉛ダイキャストパーツにもミッチャクロンマルチを塗装。2回重ね塗りして20分程度乾燥させたら塗装できる
下地として塗膜強度の高いガンショップ・インディのブライトステンレスを塗装していく
これには金属感に深みを持たせる目的もあるので、特にエッジ部分の塗り漏らしがないようにしたい
後でブラック系を重ねるので、エッジ以外は多少ムラが出てもいい。アウターバレルやスライドにも同様に塗装する。なお、スライド後部のセーフティレバーの後ろが塗り残されるので、最初に吹いた分が乾燥したらレバーを下げて追加で塗装する
色見の異なる黒色表面を塗装で再現する
いよいよ黒系の本塗装を行なう。こちらは比較的安価で入手しやすいプラモデル用の塗料を使用した。黒を3種類使い分けることで、微妙な色の差を出してみよう。
アウターバレルとフレームをGSIクレオスMr.カラースプレーの黒鉄色で塗装する
フレームは少々ムラになっても面白い感じになる
スライドはGSIクレオスMr.カラースプレーのメタルブラックで塗装する。こちらもセーフティレバーを動かして裏の塗り残しがないように
マガジンキャッチボタンもメタルブラックで塗り、フレームとの差を出す
塗料は塗装→乾燥を繰り返して薄く塗り重ねて発色させていく。最初はやや遠くからふんわりと塗料を被せるように吹き、徐々に吹き付ける量を多くしていくと液ダレしにくい
取り外した各種レバーはMr.リトルアーモリーカラーのアルマイトブラックを筆塗り
仕上げにガンショップ・インディのクリアパーカーを塗装し、トップコートを行なった
ディテールの仕上げ
仕上げとして、ディテール(細かな部分)に筆塗りで色を入れていこう。完成まであと一息だ。
スライド右側のエキストラクター部は、別パーツ感を出すためにアルマイトブラックを筆塗りする。写真のように周囲をマスキングしておくと安心
スライド側面のセーフティレバーのレッドドット表示が消えてしまったので、GSIクレオスのガンダムマーカーレッドを筆塗りして再生
エキストラクター部からうっすら見える赤の表示(ローデッドインジケーター)も再現した
スライドから外さないままだったセーフティレバーも、アルマイトブラックで塗り分けた
フロント/リアサイトのホワイトドットは、GSIクレオスのガンダムマーカーホワイトを筆塗りして再現
リコイルスプリングガイドを黒染めする
実はリコイルスプリングガイドも、ミッチャクロンで下塗りしてから缶スプレーの黒鉄色で塗装したのだが、組み付けてみたらベロンと剥がれてしまった。ここは亜鉛ダイキャストパーツなので、実銃のように黒染め(ブルーイング)で酸化被膜を作ってみよう。
さすがに擦れ合う部分(しかも金属パーツ)は、模型用塗料では塗膜強度が足りなかったようだ
そこで、塗膜をヤスリで全部剥がし、脱脂してから黒染めしてより強固な酸化被膜を作ることに。黒染め剤はウエスタンアームズ「WAスーパーガンブルー」を使用。比較的安価で、扱いやすいのが利点だ
黒染め剤を綿棒でムラの出ないよう万遍なく薄く塗布し、黒く染まったら水で黒染め剤を洗い流し、水分を拭き取って乾燥させればOK
組み立て&ちょこっとチューンアップ
一通り塗装仕上げが終わった状態がこちら。あとは、分解と逆の手順で組み上げていこう
組み立てる前に、作動をよくするため新製品の「特殊低摩擦皮膜剤 SFコート施工セット」(¥6,600 問:Military shop TORAYAMA )を試してみた。オイルなしで作動部の摩擦抵抗を減らせる効果があるという
説明書にしたがって施工していく。まず作動部(スライドとフレームが接触するレール部分など)をアルコールなどで拭いて脱脂しておく。その後スポイトでSFコート液を小皿に移し、筆で塗布する
スライドとフレームが噛み合い接触する部分を中心にSFコート剤を薄く塗布していく。3時間以上乾燥させてから組み立てよう
組み立てて試射してみると、SFコート施工の効果もあり明らかに動きがスムーズになっていて、作動が心地よい。1セットで20回程度施工できるようなので、気になる方は使ってみてはいかがだろうか?
完成!

ついにあのヤレたM92Fの再生が完了した。スライド、フレーム、バレル、そして各部レバーが微妙に異なる色合いとなったことで、より実銃のようなリアルな雰囲気を出すことができた。なお、グリップは実銃も樹脂製なので、無塗装のままにした。
スライド後部
BEFORE
AFTER
スライドにモールドされたエキストラクター部の前方に切り込みを入れ塗装したことで、別パーツ感を出した。ローデッドインジケーターの赤い表示を入れたのもポイントだ。
スライド上部
BEFORE
AFTER
スライド上面もしっかり仕上げた。フロント/リアサイトはホワイトを追加し、視認性も向上した。
マズル
BEFORE
AFTER
スライド上部のフロントサイトやマズル周りのパーティングラインが消されたことで、より精悍な印象に。
フレーム
BEFORE
AFTER
フレームのパーティングラインも処理したことで、実銃の切削加工されたような雰囲気に。ちなみに、トリガーを処理していないことに後で気づいた。ここは気にしないことに…。
リフレッシュに加え、リアル感アップの要素も追加した今回の再生作業は、いかがだっただろうか? ヤレたトイガンをお持ちの方は、ぜひこの記事を参考によみがえらせていただきたい。
この記事は月刊アームズマガジン2022年1月号 P.62~69より加筆・再編集したものです。