実銃

2024/12/01

ミリタリーウェポンの重鎮「FNハースタルの基礎知識」

 

ベルギーに生まれた世界的銃器メーカー、FNハースタル

 

FNの基礎知識

 

 アメリカ軍はもとより世界各国の軍・法執行機関向けに銃器を製造しているFN(ファブリック・ナショナル、正式名称FN HERSTAL、略称FN、FNH)は、1889年にベルギーのリエージュ州に近いハースタルで設立された歴史ある銃器メーカーである。第二次世界大戦まではコルトガバメントを手掛けたことで知られる天才銃器デザイナー、ジョン・M・ブローニングが設計したオートマチックピストルであるブローニングM1900やM1910、そしてブローニングの遺作となったハイパワーを製造していた。

 

 第二次世界大戦後、FNにとって大きな転換点になったのは、イギリス軍の要請により開発したFALである。当初はインターミディエイトカートリッジを使うアサルトライフルだったが、当時のNATO標準弾である7.62mm×51弾仕様に変更され、以後バトルライフルの傑作として世界各国で採用されることになる。

 

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バトルライフルを語る上で欠かせないのがFALである。フォークランド紛争ではイギリス軍がL1A1、アルゼンチン軍がFALと敵同士でほぼ同じ銃を使う事態となった。FALは90カ国以上の軍・法執行機関で採用されている(写真は暗視装置付きのL1A1の無可動実銃)

 

 またFALと同時期の1950年代に開発された7.62mm×51弾仕様のLMGであるFN MAGはアメリカ軍にM240の名称で採用され、現在も歩兵用や戦車などの車載機銃として運用されている。そして1970年代に入り、M16と同じ5.56mm×45弾を使うアサルトライフルFNCを開発。さらに同じく5.56mm×45弾仕様のSAW(分隊支援火器)として開発されたM249 MINIMIはアメリカ軍や陸上自衛隊に制式採用された。

 

 こうしたFNの先進性と高い技術力は、高速軽量弾を使う異色のブルパップスタイルのPDW(個人防衛火器)であるP-90や、USSOCOMの要請によって開発したSCARシリーズ、ブルパップスタイルのアサルトライフルF2000を生み出した。

 

 

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映画やアニメに登場することから抜群の知名度と人気を持つP-90。奇抜なフォルムは人間工学に基づいてデザインされており、次ページで紹介するファイブセブンピストルとカートリッジを共有できる(PHOTO:櫻井朋成[Tomonari Sakurai])

 

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P-90と同じ5.7mm×28弾が撃てるファイブセブン(FiveseveN)ピストル。、20連マガジン、ダブルアクションオンリーのトリガーメカ、特許を取得した新たなディレイドブローバックシステムを採用している

 

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USSOCOMの要請によって開発されたSCARシリーズ。誕生時は次世代アサルトライフルとして注目され、陸上自衛隊の新小銃である20式5.56mm小銃に影響を与えたとされる。(写真は7.62mm×51弾仕様のSCAR-Hの無可動実銃)

 

 こうして軍・法執行機関向けの銃器で名を馳せたFNだが、1990年代前半にフランスのGIAT(現ネクスタ—)の傘下になり社名がFNハースタルに変更され、1990年代後半にはGIATの傘下を離れてベルギー資本のハースタルグループの子会社となった。

 

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主にアメリカ海兵隊で使用されたM16A4はFNが製造権を所有している。そのためロアレシーバーにはFNのロゴが刻印されている。(PHOTO:笹川英夫)

 

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2005年にUSSOCOM(アメリカ特殊作戦軍)が行なった特殊部隊向け次世代拳銃を選定するためのプログラムJoint Combat Pistol(JCP)、通称USSOCOM JCP用に開発したFNX-45タクティカル。時代を先取りしたFNらしいハンドガンだ

 

 現在はFNブローニンググループとして軍・法執行機関向けはFNハースタルのブランド、ハンティングやスポーツシューティング向けはブローニングとウインチェスターのブランドで展開。また、次世代のアサルトライフルやLMG、カートリッジの開発も積極的に行なっているほか、アメリカ法人であるFNアメリカは独自のハンドガンを製造している。

 

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M9ピストルに代わるアメリカ軍次期制式採用拳銃を決めるMHS(Modular Handgun System) 計画用にFNアメリカによって開発されたFN509。軍には制式採用されなかったもののバリエーションのFN509MRD-LEはロサンゼルス市警(LAPD)に制式採用された

 


 

TEXT:毛野ブースカ/アームズマガジンウェブ編集部

 

この記事は月刊アームズマガジン2024年12月号に掲載されたものです。

 

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