ロングベストセラーの「M72LAW ロケットランチャー」の誕生【無可動実銃ミュージアム】

 

 この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
 さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。

 


パンツァー・ファウスト以来の傑作

 

 どのような武器も経年により陳腐化し消えていくのは宿命である。ところが数多くの武器のなかには、思わぬ効果によりロングセラーとなるものが存在する。M72 LAWもその中のひとつであり、現在も使用され続けているロケットランチャーだ。第二次大戦でアメリカ軍は射手と装填手の2名で運用する必要があるバズーカ砲を使用したが、それに対してドイツ軍のパンツァー・ファウストは1名のみで運用可能であり、発射筒部分は使用後に使い捨てにできる優れた武器だった。このコンセプトを踏襲した設計により誕生したのがM72 LAWであり、パンツァー・ファウストよりさらなる小型・軽量化と安全性を向上させ、使い勝手の良いロケットランチャーとなった。技術の進歩により戦車に対しての破壊効果は薄れてしまったが、陣地や軽装甲車輌に対してはいまだ 有効な破壊能力を備えており、今後も使用し続けられることが決定しているベストセラーモデルとなっている。

 

 

M72A2 66mm LAW ロケットランチャー

  • 全長:630mm/881mm(展開時)
  • 口径:66mmHEAT
  • 装弾数:1発
  • 価格:¥77,000

 

誤解されている破壊力

 

 ロケットランチャーと聞くと、炸薬を充填した砲弾をロケット推進により撃ちだし、破壊対象への着弾と同時に爆発を起こして装甲を吹き飛ばすというイメージがあるが、これは正確なものではない。
 M72 LAWに使用される66mmHEAT(成形炸薬)弾は、着弾時の爆発によって発生するエネルギーに指向性をもたせ、装甲の一部を高熱で溶かし、爆風によって内部にメタルジェット(ドロドロに溶けた装甲)を送り込み、搭乗員を火傷によって殺傷するか、戦車内部の砲弾の誘爆によって撃破するというものだ。

 

金属製の弾薬ケース上部にあるカバーはリアサイトを収めるためのものでその下にあるのが点火装置である

 

 そのためHEATロケット弾は命中時に装甲貫通効果を高めるため炸薬の前方部が円錐状に成形されている。発射された弾頭が回転していると遠心力が働き爆発時のエネルギーを中央に集める効果が低下するため、HEATロケット弾は6枚のフィンで低速かつ真っ直ぐに標的に向かって飛翔するように設計されている。そのため射手はHEATロケット弾の弾道を目視で確認しやすいが、高速で移動する標的に対しては、破壊対象の動きを先読みして射撃を行なう、偏差射撃が必須となるため当てにくい傾向がある。

 

 

映画などでは引き延ばすだけですぐに発射できるが、実際にはセーフティレバーを引いてシアをコッキングしないとトリガーボタンを押しても作動しない。シンプルだが誤作動を防ぐ安全性が確保された設計だ

 

トリガースイッチはラバーで覆われていて素手であっても滑ることはない、感触はクリックするような感じだ

 

 HEATロケット弾が命中した箇所は外部から見ると、テニスボールよりやや大きい程度の穴が開いたようにしかならない。映画のようなド派手な爆発はあくまで車内の砲弾が誘爆した場合にのみ起こるものだ。M72 LAWの射程は150mと意外と短く、近距離での使用例も多い。投擲する手りゅう弾や山なりに飛ぶ グレネードランチャーの榴弾に比べ、直線に飛ぶM72 LAWの方が命中精度は高く、使い勝手が良いのであろう。使い捨てが前提でメンテナンスフリー、重量 2.5kg、携帯時には70cmを切るサイズは兵士ひとりで複数本の運搬ができたので、歩兵部隊の火力強化に適している。

 

収納時には後部カバーに安全ピンが差し込まれている。未展開であればある程度の防水性も確保されている

 

外筒のチューブは不燃性のグラスファイバー製。光を当てると透けるほど薄く重量の軽減に貢献している​​​​

 

 ベトナム戦争中に多用され、推進剤の変更などいくつかの改修を繰り返し信頼性も上がっている。個人携帯火器としては最大級の破壊力を持ったM72 LAWは、まだまだ消えそうもないのである。

 

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TEXT:IRON SIGHT/アームズマガジンウェブ編集部
撮影協力:なす軍曹

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年12月号 P.238~239をもとに再編集したものです。

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